つながるファブリーコミュニティ専門家インタビュー
日頃の会話が患者さんの治療と心の支えに
お答えいただいたのは…
今回教えていただいたポイント
クリニックの特徴とファブリー病患者さんが来院されるきっかけを教えてください
当クリニックは平成26年11月、世田谷区の太子堂に開院されました。
1階の外来部門では、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症、慢性腎臓病などの生活習慣病に対して、一般的な内科と腎臓内科、代謝内科、糖尿病内科の専門診療を行っており、2階では人工透析を行っています。
院長がファブリー病に対する豊富な知識を持っており、今までに多くのファブリー病患者さんを診てきました。そのため、他の医療施設からの紹介で来院される場合もあり、ファブリー病の可能性がある方には、疾患の説明や検査を行っています。
ファブリー病について以前からご存じでしたか?
ファブリー病患者さんと実際にかかわる前は、ファブリー病のことをほとんど知りませんでした。
医師からファブリー病の説明を聴き、自分で勉強し、それから、患者さんと実際にお会いして、診察に同席しました。治療が始まってからは検査の数値を見ていくことで、徐々に理解していきました。
今では、ファブリー病を患者さんが理解し、納得できるまで、患者さんと話をします。治療をする上でも、この点は重要だと思っています。
ファブリー病の患者さんには、どのようなケアをされていますか?
ファブリー病の治療には、酵素補充療法※という点滴の治療があります。最近では内服薬もあります。
また、症状をやわらげるための治療では、副作用がないか、内服薬をきちんと飲めているか確認をします。点滴時には採血もします。栄養指標、腎機能、心機能などの検査データを主治医と一緒に確認します。
ファブリー病患者さんには、長い間治療を続けることへの不安、仕事や勉学との両立、病気を学校や職場に理解してもらえているかなど、さまざまな悩みがあります。そこで、できる限りその方が必要としている情報を調べて伝えるようにしています。例えば、他の患者さんの事例を紹介したり、ご自身の日常生活の変化を聞きながら、治療とのすり合わせを行ったり、医療費助成制度の説明をすることもあります。
- ※酵素補充療法:
- https://fabryconnect.jp/therapy/
日頃、どのようなことを心がけていますか?
患者さんと深く話すことを心がけています。
例えば外来の待ち時間や採血中に、家族のことや仕事の様子などを伺います。そうすると、患者さんのライフスタイル、性格などがわかってきます。患者さんを知ることで、患者さんとその家族に何か変化があった時に、こちらが何をしてあげられるのかに気づくことができます。
患者さんは、言いたいことがあっても主治医には言い難いこともあります。主治医の診察までに、看護師が患者さんに関することをできるだけ知り、その情報を主治医に正しく伝えるようにしています。
患者さんが治療を続けるために、どのような支援をしていますか?
治療のモチベーションが下がっている時には、主治医と相談しながらできる範囲の提案をして、どうしたら無理なく続けられるかを患者さんと一緒に考えます。
このような時、『○○の数値がよくなっていますね。』『あまり頑張り過ぎなくても大丈夫ですよ。』といった声かけは大切です。
患者さんは、治療を続けていく中で、年齢を重ね、就労や結婚など人生の節目を迎え、生活スタイルも変わっていきます。そして、治療の内容や費用も変わっていきます。人生の節目と治療の変化に常に心を配りながら、毎日、たくさんの患者さんと、いろいろな話をしています。
嬉しい時はどんな時でしょうか
患者さんの痛みが軽減したと聞いた時や、検査の数値がよくなっている時は、とても嬉しいです。
そして何よりも、患者さんに頼ってもらうことです。通院間隔をもう少しあけたい。治療費が高いことを主治医には相談しにくい。そんな時、患者さんは私に声をかけてくれます。患者さんから頼りにされることは、看護師である私にとって、とても嬉しいことです。
外来での看護師の役割を教えてください
特に大切な役割は、主治医のサポートと、患者さんの心をサポートし続けることだと感じています。
患者さんに接する時間が主治医よりも長い私は、積極的に患者さんに話しかけて、患者さんとの何気ない会話から、患者さんが気になっていることを聞き出し、主治医に伝えています。
同時に、患者さんに対しては、できるだけ安心してもらうために声かけをしています。最初に必ず『お変わりないですか?』と声をかけます。注射をする時は、痛みが少しでもやわらぐように、声をかけながら行っています。薬に関しても『薬は飲めていますか。余りはないですか。』と確認しています。患者さんに安心して治療を続けてもらえるような心のサポートも、看護師の大切な役割であると思っています。