つながるファブリーコミュニティ専門家インタビュー

遺伝とこころの不調に向き合う
~気持ちを楽に、自分を大切に~

お答えいただいたのは…

鎌田 依里 先生

東京福祉大学

心理学研究科/心理学部

講師 鎌田 依里 先生

今回教えていただいたポイント

ファブリー病は遺伝子の変化により起こる病気です。
遺伝子の変化は誰にでも起こりうることで、誰のせいでもありません。
しかし実際には、周囲の理解不足により、それが悪いことのように捉えられ、悪い意味の印としての扱いを受けること(スティグマといいます)もあります。
スティグマに悩まされ、嫌な経験をしてしまうと、自身のメンタルヘルスを悪化させる要因になる場合があります。
こころの不調を和らげて、自分らしく生きるためにできることを、こころの専門家として長年にわたり難病患者さんの相談を受けておられる臨床心理士の鎌田先生に伺いました。
歩いていけば、進んでいけば、誰かが、何かが、あなたの力になってくれます。
歩いていけば、進んでいけば、誰かが、何かが、あなたの力になってくれます。
家族とのかかわり方で心にとめておくとよいことは
家族だからといって「病気のことをすべてわかる」という前提でいるとお互いに苦しくなります。

「家族だけど、別の人間なのだから、わからなくて当然」です。何かフォローしてもらったときには「ありがとう」の一言は忘れないようにしましょう。そして、病気のことだけではなく、一緒に過ごす時間を楽しいものにしようとする努力は必須です。

家族の「楽しかったことノート(アルバム)」をコツコツと作成しておくこともよいでしょう。
「今日あった、よかったこと、嬉しかったこと」を一行ずつ、交換日記のように書き込んで、いつでも見られるようにしておくとよいかもしれません(それが結構、後になって役立つことが多いです)。

家族以外の人とのかかわり方は
病気のことを知っているピア(同病者)の存在も確かに必要な場合もありますが、病気以外の話題を話せる場所を、いくつか設けておくことで、人間としての多様性と多角的な視点で思考することを忘れずに生きることができます。

一つの集団のみに属するのではなく、いくつかの質の高い集団に属することも、こころの健康を維持するために有効です。
自分がかかわる人や集団は、相手への不平や不満を吐き出す場ではなく、(もちろん弱音は吐いてもよいですが)建設的な会話ができる人たちとかかわる場にしましょう。
そして、SNSだけではなく、昔ながらの良書にも触れましょう。身近にいなくても、世界のどこかに必ずあなたと同じことを悩み、考え、生きた人がいます(それはもうお亡くなりになられた人かもしれませんが、その人の志は次の世代に受け継がれています)。

言葉を丁寧に扱いましょう。あなたは決して一人ではないと実感し、地に足をつけて生きていくことができるはずです。
また、人は誰でも見せられない苦悩を必ず持っています。口にはしないけれど、他の人も何らかの悩みや困難を抱えて生きているという前提で接しましょう。
「自分だけが不幸だ」とか「なんで自分がこんな目に遭うのだ」という気持ちではなく、いつも「お互い様」という心持ちでいると、より穏やかな人間関係を構築することが可能となります。